入通院慰謝料について
入通院慰謝料とは
交通事故で怪我を負えば,それによって痛い思いをしたり,病院に入通院しなければならなくなって,大きな精神的苦痛を被ることになります。
そこで,このような入通院に伴う精神的苦痛を金銭的に評価して,慰謝料を支払ってもらうことで,鎮めて(慰謝して)もらう必要があります。
このように,交通事故による受傷および入通院に伴って発生する精神的苦痛を慰謝するために支払われる金銭を入通院慰謝料といいます。
入通院慰謝料の算定方法
自賠責保険では,入通院慰謝料は1日あたり4200円,任意保険では,各保険会社の内部基準によって定められています金額に基づいて,入通院慰謝料を算定することになります。
これに対し,裁判基準では,「民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準」(通称『赤い本』)に掲載されている「入通院慰謝料算定表」に従い入通院慰謝料を算定することになります。
この「入通院慰謝料算定表」には,別表Ⅰと別表Ⅱとがあり,通常の傷害の場合には別表Ⅰを,頸椎捻挫などむち打ち症で他覚症状がない場合に使用するものとされています。
別表Ⅱの基準額は別表Ⅱに比べて低く設定されているのですが,その理由は,軽度の神経症状の場合には,受傷者の気質的な要因が影響して,入通院期間が長引いていることが少ないことによるものとされています。
裁判でも,診断名が頸椎捻挫などであれば,加害者側は当然のように赤い本の別表Ⅱに基づいて入通院慰謝料を提案してきますが,ただちにこれに応じることはあまりお勧めしません。
たとえ診断名が頸椎捻挫などであったとしても,裁判所は,必ずしも頸椎捻挫の入通院慰謝料=別表Ⅱの入通院慰謝料という判断はしませんので,あきらめずに赤い本の別表Ⅰの入通院慰謝料を主張するようにがんばってみましょう。
その場合,MRI画像や診断書等の根拠をもって他覚症状が存在することを主張できれば,別表Ⅰ基準での慰謝料請求が認められる可能性が高まります。
ポイントは,画像所見等の他覚症状によって,むち打ち損傷による神経症状等の発生,およびその必要な相当期間を医学的に証明できるかどうかです。
入通院期間について
また,入通院慰謝料を算定する場合,入通院期間をどのように計算するかが問題となります。
入院期間が問題となる場合は少ないのですが,被害者が幼児を持つ母親であったり,仕事上の都合など被害者側の事情により特に入院期間を短縮したと認められる場合には,その事情を慰謝料の算定の際に考慮されることがありますし,入院待機期間中の期間及びギプス固定中等安静を要する自宅療養期間は入院期間と見ることがあります。
通院期間については,基本的には,最初の通院から最後の通院(治癒ないし症状固定の診断日)までの期間をもって,通院期間とすることになります。
ただし,通院が長期間にわたり,かつ不規則である場合には,実通院日数の3.5倍程度を慰謝料算定のための通院期間の目安としたり(別表Ⅰの場合),実通院日数の3倍程度を目安とする(別表Ⅱの場合)ものとされています。