人身事故に遭った場合の対応

人身事故と物損事故の違い

事故によって死傷者が出た場合,警察は通常,人身事故として処理します。

これに対し,けが人が出ずに自動車や建物の損壊で済んだ場合は,警察は物損事故として処理します。

人身事故の場合も物損事故の場合も,加害者に対し,損害賠償を請求できる点では変わりませんが,その自賠責保険においては,人身事故か物損事故かで扱いが大きく異なります。

人身事故の場合には,自賠責保険から人身被害の状況に応じて,保険金が受け取れるのに対し(被害の程度に応じて~3000万円(死亡時)まで),物損事故の場合は自賠責保険に賠償請求はできません。

自賠責保険は強制加入の保険ですので,仮に,加害者が任意保険に加入していなくても,人身事故なら被害者は自賠責保険によって最低限の補償を受け取ることできます。

したがって,人身事故にとして扱われるか,物損事故として扱われるかは,被害者が補償を受けるうえでは,重要な意味を持ってきます。

人身事故を物損事故扱いされた場合のデメリット

交通事故で発生した場合に,被害者の怪我が目に見えてわかるほどの怪我でなければ,加害者ほうから,物損事故で処理してくれるように申し入れてくることがあります。

これは,物損事故扱いになれば,加害者は刑事処分(罰金など)や行政処分(免許の減点や取り消しなど)を受ける可能性がなくなるからです。

しかし,被害者の立場からみれば,自賠責保険に賠償請求ができなくなるうえに,加害者の任意保険から治療費を支払ってもらえない,後遺症が残っても賠償がなされない,警察により事故態様に関する正確な記録(実況見分調書等)が作成されないといった数多くのデメリットが発生します。

人身事故の被害にあった場合には,たとえ軽傷だと思っても,警察に傷害の症状を訴えるとともに,すぐに病院に行って診断書を書いてもらい,警察に届けましょう。

物損事故から人身事故に切り替える方法

それでも,最初は,被害が物損だけと思っていたのに,後になって,人身被害が出てくることがあります。

例えば,事故当時は,軽傷だと思って物損事故にしたけれど,数日後に,むち打ちの症状が出てくる場合があります。むち打ちの症状は,事故直後には症状が出ずに,事故の翌日以降になって出てくることが多いのです。

この場合は,症状がでた時点で直ちに病院にいって警察に人身事故の届出を行ってください。

事故発生日から期間が開きすぎると,事故と怪我との関連性が不明という理由で警察署によっては人身事故への切り替えに応じてくれないこともあります(期限は,1週間から10日が目安と言われています)。

仮に,人身事故へ切替が認められない場合には,保険会社に人身事故入手不能理由書を提出することになりますが,原則として加害者の署名押印が必要となるうえに,理由書の内容を加害者側保険会社が鵜呑みにしてくれるとも限りません。

ただ,警察官の中には,「人身事故になると実況見分調書を作らなければならず,手間と時間がかかる」との理由から,物損事故から人身事故への切り替えをしぶる人もいます。

警察が人身事故への切り替えに協力してくれない場合には,早めに弁護士に相談しましょう。

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