3つの基準

交通事故で,被害者がどれくらいの損害を負ったのかは,実際に損害を計算しなくとわかりません。

交通事故で発生する損害には様々なものがありますが,損害のうちでも慰謝料や逸失利益などは実際の損害の額を決めることができませんので,ある程度「どのくらいだ」ということを決めておかなければなりません。

つまり,これくらいの事故だと,いくらぐらいの慰謝料が発生している,このぐらい怪我をしていると,これぐらいの損害が発生しているということを,予め決めてある基準が必要になります。

自賠責基準

自賠責保険は自動車事故の被害者を保護するために,加入が強制されている保険です。ですが,本来被害者の救済はそれぞれの保険で賄うのが原則であって,自賠責保険は最低限の保障をすることがその目的です。

そこで,損害額についての自賠責基準は,相当程度低いものとなっています。詳しい基準は法令で決められており,自動車損害賠償保障法施行令2条とその別表1,2にその記載があります。

ただし,自賠責の基準は被害者保護をするためのものですので,過失相殺の適用が緩やかである,という特徴があります。死亡事故で重過失がある場合でも最高5割,傷害事故なら最高2割までしか減額されません。過失の大きさによっては,後に述べる任意保険の基準や裁判基準より,支払額が大きくなることもあります。

任意保険基準

任意保険は自賠責保険の上積みをする保険であり,示談交渉の際の支払基準として各保険会社が任意保険基準を決めています。平成9年3月までは,保険会社共通の基準があったのですが,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律等の問題もあり,現在は各保険会社が独自に決めています。

額は自賠責保険の上積みという性質上,自賠責基準より高額であるのが特徴です。

また,軽微な事故などでは,任意保険基準を適用することで.裁判をセずに,いち早く解決することができます。

反面,裁判基準よりは低額に設定されているのもその特徴の一つです。

裁判基準

交通事故については,現在多くの裁判例が蓄積されています。これらの裁判例を,財団法人日弁連交通事故相談センターが調査,分析し,公表したものが裁判基準です。

これらの基準は書籍としてまとめられ,「交通事故損害算定基準(通称青本)」「民事交通事故 損害賠償算定基準(通称赤い本)」として発刊されています。裁判基準は年々詳細になり,精密になっていますので,裁判官自身も参考にしています。

ただ,裁判基準はあくまでも一応の目安であり,実際の事故では裁判基準を参考に,事故の状況などによって増減することがあります。

   
   

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